幅厚比って聞いたことあるけど、よく分からないって人いますよね。
この記事では、幅厚比について分かりやすく解説します。
幅厚比とは
「幅厚比」とは、その言葉のとおり「板の幅と厚みの比」です。
例えば、幅が90mmで厚みが9mmの板があるとします。
その幅厚比は
よって、この板の幅厚比は10という使い方をします。
なぜ幅厚比を考える必要があるのか?
H鋼やアングル(山型鋼)は、板要素を組み合わせた形で構成されています。
例えば、H鋼は3つの板で構成されていると考えることができます。
断面効率としては、それらの板要素が薄いほどよいです。
でも、薄すぎると全体的に座屈する前に、局部的に座屈してしまいます。
そのため、圧縮応力がかかる材料は、局部座屈(板にシワができる)が生じないよう板要素に幅厚比の制限を設ける必要があります。
代表的な幅厚比制限値
幅厚比制限値は、以下で決まります。
・支持条件
・E:ヤング率(縦弾性係数)
・F:基準強度(降伏点)
順番に解説します。
支持条件とは
支持条件とは、その板要素がどのように支持されているかを表すものです。
例えば、H鋼のフランジ(上面の板)を考えてみると、下図のように1か所で支持している片持ちと同じ支持になっていると考えられます。
このような支持条件を「1縁支持他縁自由の板要素」といいます。
次に、H鋼のウェブ(縦の板)を考えてみると、下図のように2か所で支持している両端支持梁と同じ支持になっていると考えられます。
このような支持を「2縁支持の板要素」といいます。
E:ヤング率(縦弾性係数)とは
ヤング率は縦弾性係数とも呼ばれ、「弾性」とは材料に外力を加えた際、その外力を取り去ると元の形状に戻る性質のことです。
ヤング率が大きいほど剛性の高い材料ということになり、変形のしづらい材料の目安となります。
例えば、よくに使われる「SS400」のヤング率は2.06×106 N/mm2です。
F:基準強度(降伏点)とは
基準強度は降伏点とも呼ばれ、鋼に力を加えたときに弾性変形域の限界の応力のことをいいます。
基準強度以上の力を加えると、鋼に加えると、塑性変形し、力を取り除いても元の形状には戻りません。
例えば、よく使われる「SS400」の降伏点は235N/mm2です。
幅厚比制限値の一覧表
幅厚比制限値の一覧表を掲載します。
この表は先ほど説明した中の支持条件から使用する一般式を選んで使います。
例)H鋼のH300×150×6.5×9のフランジ(上面の板)の幅厚比
試しに、H鋼のH300×150×6.5×9のフランジ(上面の板)の幅厚比を考えてみます。
上面のフランジは、1か所で支持している片持ちと同じ支持になっていると考えられるので、このような支持条件は「1縁支持他縁自由の板要素」でしたね。
そして、このH鋼の材質はSS400だとすると、それぞれの条件は以下のようになります。
・支持条件 →「1縁支持他縁自由の板要素」
・E:ヤング率(縦弾性係数)→ 2.06×106 N/mm2
・F:基準強度(降伏点)→ 235N/mm2
使用する式は
H300×150×6.5×9のフランジ(上面の板)の幅厚比は
片持ち長さ:b = 75mm、フランジの厚み:t = 9mm
よって
b / t =75 / 9 = 8.3
幅厚比は8.3
次にH300×150×6.5×9のフランジ(上面の板)の幅厚比制限は
ヤング率:E = 2.06×106 N/mm2、基準強度:F = 235N/mm2
よって
b / t = 0.53×√2.06×106 / 235 = 49.6
幅厚比制限は49.6
結果をまとめると
H300×150×6.5×9のフランジ(上面の板)は
幅厚比:8.3 < 幅厚比制限 49.6
幅厚比制限より小さい幅厚比となっているため、圧縮応力がかかっても局部座屈(板にシワができる)は起きないことが確認できました。
一般的なH鋼は、ほぼほぼこのような局部座屈しないような幅厚比を持たせてあります。
ただし、型鋼を使わなかったり、条件によっては幅厚比制限を超えることもありますので、かかる圧縮応力の大きさや部材の重要度に応じて、幅厚比を確認するようにすると良いと思います。
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