肌の繊維組織を壊してしまう
加齢にともなって感じ始める顔のたるみや、くすみ。
なんとか解消しようと毎晩お風呂上がりに顔をマッサージしているという方もいるかも入れません。
口まわりにほうれい線の兆しでも発見したものなら、たしかに両頬をぎゅうっと引き上げたくなるのもわかります。
でも、医学的に考えると、そうしたマッサージは残念ながらまったくの逆効果。
肌のたるみやくすみ、黒ずみをつくる原因になってしまうからです。
軟部組織の構造上、わたしたちの肌の表面をピンとハリのある状態で維持するために頑張っているのは、皮膚を支えている繊維組織。
ですから、肌のハリを保つためには、この繊維組織をできるだけ壊さずに、たくさん温存したほうがいいのです。
マッサージで押したり揉んだり引っ張ったりすると、この大切な繊維組織が壊れます。
皮膚を支えている細い糸が、プチプチプチッと切れてしまうのをイメージしてみてください。
マッサージすることで、わざわざたるみをつくっているともいえるのです。
また、形成外科では、骨盤の後ろ側にあたる仙骨などの骨突出部のマッサージは禁忌とされています。
皮膚への摩擦や、ずれによって細い血管が途絶することなどが皮膚障害を引き起こすからです。
この考え方は全身の皮膚、もちろん顔のお肌にも当てはまるといえるでしょう。
肌を持ち上げても変わらない
日々、手術している身として思うのは、人の肌は手で持ち上げたぐらいでどうにかなるものではないということ。
たとえば、顔面神経マヒの患者さんになんとか表情をつくるためにと、筋肉を持ち上げて縫えばいいと思うかも知れませんが、実際にはそう簡単に上手くはいかないものです。
また、リフトアップなど頬を持ち上げる美容外科の手術もありますが、皮膚の下の筋膜などの強固な組織も含めて施術してはじめて、効果が出ます。
ですから、手でいくら押し上げたり引っ張ったりしてみたところで、せっかく皮膚を支えてくれている繊維組織を壊すだけで、肌へのメリットはないのです。
マッサージローラーは使い方に気をつけて
人気のマッサージローラーも、肌の構造を考えると、やはり使いすぎは禁物です。
血流やリンパの流れは良くなるでしょうから、むくみがとれて一時的に顔がスッキリする効果はあるでしょう。
ただ、頬の周りなど皮膚の薄い部分に強い力で長時間使うと、筋繊維を壊して逆効果になります。
長期的に考えると、あとでシワになったり、たるみが悪化する可能性もありますから、あまりオススメできません。
もし使うなら、なるべく優しく短時間で済ませたほうが安心です。
肌をこすってはいけない
マッサージをオススメできないもうひとつの理由は、”肌はこすると黒くなる”から。
スキンケア商品を浸透させようと一生懸命こすってすり込もうとする方がいるのですが、肌にとってはこれは絶対NGです。
くすみや黒ずみの原因になります。
肌が摩擦を受けつづけると、角質を厚くするケラチノサイトとメラニンが誘因されることは科学的に証明されています。
その部分が黒ずんで色素沈着になるということです。
ときどき、肘や膝などの突き出た部分が黒ずんでいる人がいますが、ほかの部位よりも摩擦を受けやすいために色素沈着を起こしているのです。
そうした黒ずみを落とそうとしてゴシゴシ洗うと、逆に悪化します。
肌は「触らない」ほうがいい
摩擦によって生じてしまった黒ずみを消し去るには、触らずに待つしかありません。
皮膚を再生するターンオーバーは約6週間。
そのターンオーバーを助ける最も簡単な方法が「触らない」ことなのです。
肌本来の自己再生力を信じて、できるだけ「触らない」スキンケアをオススメします。
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