化粧品のCMなどで「肌の奥まで浸透する」というフレーズを見聞きしますよね。
でも、医学的に考えて”肌の奥まで浸透する”なんてことはありえません。
この記事では、化粧品が肌の奥まで浸透しない理由を説明しています。
”肌の奥まで浸透する”はありえない!広告に翻弄されていませんか?
ひとつ、皆さんに質問です。
化粧品のCMなどで見聞きする「肌の奥まで浸透する」の「奥」とは、いったいどこのことでしょうか。
答えは「角質層」です。
「角質層まで浸透してプルプルのお肌に」などの宣伝文句もお馴染みなので、ご存知の方も多いと思います。
ただ、ここで質問したポイントは、この角質層がどれくらい「奥」にあるかという点。
実は、わたしたちの肌のいちばん表面にあるのが、この角質層です。
「あれ?どうゆうこと?」と思うかもしれません。
角質層まで浸透するといわれると、なんだかものすごく奥のほうまで染みわたってお肌に良いような気がしてしまいます。
でも、角質層というのは、肌表面の厚さ0.01〜0.031ミリの部分を指します。

肌の構造
ここで肌の構造について紹介しておきましょう。
わたしたちの肌は、真皮と表皮からなりたっています。
そのうちの表皮が肌表面にあたる部分で、厚さは平均0.02ミリほどです。
この肌の表面(=表皮)はさらに分類され、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層からできています。
つまり、いちばん外側にあるのが角質層です。
そして、この角質層は、表皮の第4層目にあたる基底層が絶えず分裂をくりかえすことで押し上げられた”死んだ細胞”から作られています。
少々、ショッキングな表現かもしれませんが、肌の表面は”死んだ細胞”で覆われているのです。
イメージ図をご覧いただいてもわかるように、角質層の次にある顆粒層より下の部分には細胞核の点が見えますが、角質層にはありません。

細胞が生きていないので、血液中からの栄養が補給されることもないのです。
この角質層はふやけた理、傷ついたりすることで、構造が容易に崩れます。
化粧品が浸透するのは、死んだ細胞まで
化粧品が浸透するは一般的に、死んだ角質細胞で形成されている「角質層」まで。
その下で細胞分裂している肌の「奥」に届くことはありません。
また、角質層はいちばん外側にあるので、見た目の美しさを左右します。
それゆえ、この角質層を一生懸命ケアしようとするわけですが、角質層はそもそも、しばらくすれば垢となって剥がれる運命なのです。
実は、化粧品の管理を行なっている「薬事法」という法律でも、化粧品が角質層(=角層)よりも奥まで浸透するという広告は禁じられています。
ですから、どんなに効果があるように思える宣伝広告でも、よく目を凝らすと必ず、「浸透するのは角(質)層まで」とどこかに明記されているはずです。
多くの人が、このたった0.01〜0.03ミリの死んだ細胞の表面をうるおわせるために、化粧水をせっせと使っている、ということになるわけです。
果たして意味があるのでしょうか。

肌の最大の役割は「カラダを守ること」
では、角質層のさらに奥まで届くものがあるのかといえば、特殊な薬品や医療技術を用いない限り基本ありません。
というのも、肌の本来の機能を考えると、それはあってはならないことだからです。
わたしたちの肌は、そもそも何のために存在しているのでしょうか。
肌の最大の役割は、「カラダを守ること。」
異物が体内に侵入するのを防ぐ「バリア」の役割を果たしているのが肌なのです。
そのバリア機能のおかげで、わたしたちの細胞や血管、神経が守られています。

全身の約30%の皮膚にやけどを負うと、致命的だといわれます。
そして忘れがちですが、肌はわたしたちの臓器のひとつ。
肌は、体重の約16%を占める、人体で最大の臓器です。
外の世界に直接触れる臓器ですから、さまざまな役割を持っていますが、主には4つです。
- 水分の喪失や侵入を防ぐ
- 体温を調節する
- 微生物や物理化学的な刺激から生体を守る
- 感覚器としての役割を果たす
いずれも生命を維持するために必要不可欠な機能です。
また、「カラダを防御する」機能として、最表面にある角質層が最も重要な役割を果たしています。
この角質層の厚さは平均0.02ミリしかありませんが、健全であれば同じ厚みのプラスチック膜と同じくらい、水分を通しにくい性質があります。
もし、角質層がバリア機能を失って、何でもかんでも浸透させてしまうようになると、局所だけでなく全身が危険にさらされる可能性があるということです。
実際に表皮を超えて異物が侵入したことで、重篤なアレルギー症状を引き起こした例も報告されています。

肉や魚の切り身を想像してみてください。
肌にバリア機能がなければ、肉や魚の切り身のように塩や胡椒や醤油などの下味をすりこめるということになるでしょう。
そんなことが肌に起こったら大変です。
肌は外界の異物からカラダを守っています。
そのバリアに対して、外からすり込んだり、押し込んだり、温めてみたり、ラップをしてみたりと頑張っても、バリアより奥深くに化粧品の成分が届くことはないのです。
正しく化粧品と向き合う
肌の「カラダを守る」機能に加えて、「カラダから逃さない」機能としても、皮脂のバリアが重要です。
健全な肌の表面は皮脂で覆われ、脂質(セラミド)や天然保湿因子・水分が逃げないように守られています。
しかし、一旦バリアが破壊されると保持されるべき物質が角質層から外へ流出し、乾燥を引き起こすのです。
肌へ化粧品を浸透させようと思うと、バリアを破壊する必要があります。
しかし、バリアを破壊すれば肌の大事な成分を保持できなくり、頻回に化粧品をつけても乾燥するという悪循環を生みます。
大事なのは、正常なバリア機能を邪魔しないこと。
化粧品を浸透させるのではなく、バリアとなる皮脂を補強するような化粧品の使い方を意識することが重要です。

肌の自己再生力を蘇らせるー大切なのはバリア機能
ここまででもお分かりかと思いますが、巷にあふれている広告はとても魅力的ですが、文字通りほとんどが「広告」です。
たしかにさまざまな研究が進み、新しい成分がつぎつぎに登場し、新たな効能の科学的エビデンス(検証結果)が取れているものもあるかもしれません。
しかし、肌トラブルが生じたときにいつも立ち返って思い出していただきたいのは、肌本来の役割。
そう、バリア機能です。
このバリア機能をしっかり維持することができれば、肌はおのずと美しくなる力を備えています。
肌トラブルが生じたとしても、わたしたちの体内では絶えず細胞が生まれ変わっています。
少し待っていれば新しい肌に生まれ変わるのです。
手術で肌をどんなに上手く切り貼りし、美しく縫合する技術を使えたとしても、傷が最終的にキレイに治っていく過程は、人体の自己再生力なくしてあり得ません。
そして、どんな肌にも、その力は備わっているのです。
ちなみに、表皮のターンオーバーは約6週間サイクルで行われるといわれています。
ですから、ちょっと乱暴な言い方をすれば、6週間、肌の機能を邪魔しないように待てばいいのです。
もちろん、食べ物や生活習慣、ストレスなども肌に影響しますが、肌に関する正しい知識を持っていれば、何をして何をしなくていいかが、わりとスッキリ見えてくると思います。
迷える化粧品選びと決別したいなら
とはいっても、やはり何かしらお肌のためになることをしたいと思う気持ちも分かります。
少しでも早くキレイな肌を手に入れたいと思うのも当然のこと。
ただ美容情報は膨大にありすぎて、何を選べばいいのか、どう選べばいいのかも分からないのですが現状です。
大切なのは何よりもまず、自分の肌に自信が持てるようになること。
そしてあなたが選んでいる化粧品や美容技術が、自分に合っていて心地よいと感じられることではないでしょうか。
合っているのかよくわからないから他のモノを試してみようと、いつもどこかに不安があるような化粧品選びは、もう終わりにしましょう。
理にかなっている情報はどれなのか?
そして、あなたはどんなものを選ぶべきか?
その答えをよりシンプルに導き出すために、このサイトで紹介している知識を役立ててください。
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