この記事では、旧法借地権、普通借地権、定期借地権が誕生した理由を歴史的な背景から解説しています。

前回、借地権は3種類あるって言ってたよね。

そう。現在は旧法借地権と普通借地権、定期借地権の3種類。

似たような名前ばっかり。なんでこんなことになってんの?

それを知るには、借地権の歴史を知るのが一番わかりやすいと思うよ。

そうなの。わかりやすく教えてな。

まずは借地権の歴史を年表で見てみよう。
借地権の歴史年表


1941年の「1度貸したら返ってこない最強の借地権が誕生」ってところがインパクトあるね。

でもこれには、悲しい時代背景が関係しているんだ。それぞれの内容を詳しく見てみよう。
1909年「建物保護ニ関スル法律」制定
1909年に施行された「建物保護ニ関スル法律」(建物保護法)が、借地権の法律の前身です。
当時、建物は貴重な財産であり、社会的なインフラであるとみられていました。
その建物が土地の権利関係で解体されたり、取り壊されることを防ぐために、この法律が施行されました。
この法律では、借地権者が建物の登記をしておくことで、地主の協力が得られなくても単独で借地権を主張することができるようにしています。
よって借地上の建物でも借地権者名義で登記さえしておけば、地主が代わったとしても引き続き新地主から土地を借り続けられるようになりました。
なお、この頃の借地契約期間は一般的に8年〜12年程度でした。
1921年「借地法」「借家法」制定
この頃、資本主義経済の発展により都市部に人口が集中してきたため、都市部の住宅不足が問題になっていました。
その問題を解決するために「借地法」「借家法」が制定されました。
この法律では、借地上の建物と借地人の地位を確立し、保護することが決めています。
また借地法では、契約できる借地権の期間を最低でも20年となり、それまでの一般的な8年や12年という短い契約は認められなくなりました。
1941年「借地法」「借家法」改正
1941年に「借地法」「借家法」が改正され大きな変化が起きました。
その変化とは地主は「正当事由」がなければ借地契約の更新を拒絶できないというものでした。
これにより契約期間満了後も法定更新(法律で前契約と同条件で継続)されることになりました。
ではどんな理由であれば正当事由と認められるかというと、誰が見ても「やむを得ない」と言われるほどでなければならず、地主にとっては大変厳しいものでした。
そのため地主が更新を拒否したいのであれば、「やむを得ない」理由があって裁判所が借地人の事情をよくよく考えたうえでようやく認める、ということになったのです。
これ以降、正当自由がなければ契約は更新されていくという流れが確立され、地主は事実上、借地権者の更新を認めざるを得なくなり、借地権者の地位の保護はより強固になりました。
こうして「1度貸したら返ってこない」最強の借地権が誕生しました。いわゆる、旧法借地権です。
では、なぜこんな改正が認められたのでしょうか。
改正時は戦争中であり、男の人が家族を残して戦地に行っても安心して戦って死んで行けるように、そしてもし返って来たときには帰る家があるように配慮したが改正の理由でした。
大変悲しい歴史です。
1992年借地借家法施行
その後、借地権があまりに貸主にとって不利なこと、時代の趨勢などから法律の改正の動きが高まりました。
それを受け「借地法」「借家法」「建物保護法」を一本化する形で改正され、1992年から施行されたのが「借地借家法」です。
主な改正点は3点です。
- 「定期借地権」の新設
新法の目玉として、更新のない定期借地権が生まれました。 - 普通借地権の存続期間の変更
更新後の借地期間が短くなりました。 - 地主の更新拒絶の正当事由の明文化
地主の更新拒絶の通知期間として判例を残して、地主の拒絶事例を作っていこうということになりました。

旧法借地権の誕生は戦争が関係していたのかー。なんとも複雑だ。

とても悲しくなるね。

でも歴史を振り返ることで、借地権の現在までの流れがわかった。
以上、【不動産投資】旧法借地権、普通借地権、定期借地権が誕生した理由|歴史的な背景から紐解いてみると悲しくなったという記事でした。
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